小規模事業者持続化補助金(コロナ特別対応型)の書き方と記入例を解説
昨今、新型コロナウイルスの蔓延を受け、国や自治体から様々な補助金制度が創設されています。そのうちの1つが、「小規模事業者持続化補助金」です。
小規模事業者持続化補助金は、大規模でないお店や事業に対して返済不要の補助金がもらえるという制度であり、経営者の方の強い味方です。さらに、コロナ特別対応型となると、最大で200万円の補助金を受け取ることができます。
しかし、補助金申請書の作成で挫折した方も多いのではないでしょうか。
作成する書類は多岐に渡り、専門用語も多いため、なかなか作成が進まないという方も多いと思います。
そこで当記事では、小規模事業者持続化補助金(コロナ特別対応型)について、書き方と記入例を説明しながら、どのようなポイントに注意して申請書類を作成していくべきかを解説していきます。
小規模事業者持続化補助金(コロナ特別)について
申請のポイント
小規模事業者持続化補助金(コロナ特別対応型)の申請のポイントは、なんといっても採択される申請書を作成するという点につきます。
いわゆる助成金と異なり、「書類さえ作ればお金がもらえる」というものではありません。補助金申請をした事業者の中から、一部の事業者のみが補助金を受け取ることができる(=採択される)のです。
ここで重要となるのが、「申請書のどの部分が採択に影響するか」ですが、これには大きく2点あります。
@常時使用する従業員の数、申請経費の種類など、申請の要件に適合しているか
A申請書の「計画の内容」の品質が高いか
主に、この2点が重要となります。
@については、採択の大前提となる部分です。ここはいわゆる足切りでして、この要件に満たないと問答無用で不採択となります。
@の要件に合致した事業者の中から、Aの「計画の内容」の品質が高い事業者から順に定員に達するまでの事業者が採択されるという仕組みです。
ここで、Aの「計画の内容」とは、様式2にあたる部分です。様式2は最も記載しなければならない内容が多く、皆さんもお悩みの所なのではないでしょうか。
実際に、計画書を見てみたいと思います。
こんな形式になっています。
1枚にまとまっているため、ちょろっと書けば大丈夫にも見えます。しかし、この「申請の内容」を1枚しか書かなかった場合、不採択となる可能性が非常に高くなると思って下さい。
実は、この申請書の上に注意書きで「計画の内容は最高5枚までとしてください」と書いてある通り、複数枚書くことが前提なのです。私自身、補助金申請の代理人として申請書を作成するときは、少なくとも4枚は計画の内容を記載します。
計画の内容を書く上でのポイントは、
@イラストや図などを用いて分かりやすく伝えること
A補助金の審査員はあなたの事業を申請書でしか判断できない(それ以外のことは分からない)点を意識すること
B来客人数、客単価、今後の見通しなどについて、具体的な数値を記載すること
などです。計画の内容は他の記載項目と違い、自ら考え書かなければならいため、初めて補助金申請をされる方は大変かと思います。
そこで、ここからはこの書き方と記入例を、見本を掲載しながら解説していきたいと思います。実際に私が申請書を作成し、採択されたものを簡単にアレンジしたものですので、参考にして頂けると思います。
それでは、順番に解説していきます。
(1)投資する類型
「投資する類型」については、ABCのいずれかにチェックを入れるだけです。シンプルですね。基本的に、飲食店や小売店の多くはAかBになると思います。
ここで難しいのは、「サプライチェーン毀損」という単語です。これはざっくりいうと、コロナウイルスの影響でお店の生産活動や販売活動がダメージを受けているという意味になります。詳しくはこちらをご確認ください。
以下、記載例となります。
(2)事業概要
「事業概要」は、現在行っている事業について、その内容や顧客の特性、市場動向、価格帯などを記載します。今やっていることを記載する箇所ですので、これからの取り組みなどは記載してはいけません。
ここでは、とあるイタリアンレストランをモチーフに作成しています。以下、記載例となります。
(事業概要)当店は、季節の食材を使ったグラタンやパスタを地元顧客へ提供するイタリアン料理店である。〇〇駅前に店舗を構え、地元密着の料理店として出店〇年目となる。奥行きのある店内と洒落た内装が相まって、隠れ家的イタリアンとして中高年の女性客・家族連れから特に人気が高い。来店客のおよそ7割は高齢者であり、リピート客も多く、普段使いの店として地元住民に親しまれている。
来店客の多くが高齢者であることも踏まえ、国産食材にこだわったヘルシー嗜好の料理を提供しており、評判の声も多い。このように、落ち着いた住宅街である当店周辺の特徴に合わせた料理の提供が当店のコンセプトであるといえる。
【市場動向】
当店が位置する〇〇区は住宅街として人気が高く、直近20年以上にわたり人口は増加傾向にある(令和2年1月1日時点の人口約〇〇万人)。また、〇〇区が公表している将来人口推計によれば、少なくとも今後20年間は人口増加が続くといわれている。
店舗近隣としては、店舗から徒歩10分圏内におよそ9千人、徒歩20分圏内におよそ4.5万人が住んでおり(平成27年国勢調査より)、地元住民向けの市場規模が大きく、常連客が多い要因だといえる。
以上のように、当店周辺の人口規模は大きく、十分な市場規模と今後の拡大が想定されるものの、新型コロナウイルスの影響により見通しがつかない状況となっている。
このような内容を記入します。確認となりますが、申請書の作成で重要なことは、
@審査員はあなたの会社・事業を初めて目にするということを意識すること
A具体的な数値を記入すること
この2つです。初めて見た人が分かりやすいように、当たり前のこともしっかりと記入して下さい。また、なるべく撮影した写真やイラストを載せるようにしてください。
(3)新型コロナウイルス感染症による影響
「新型コロナウイルス感染症による影響」は、売上の減少や来店顧客の減少などをシンプルに記入します。
以下、記載例となります。
(新型コロナウイルス感染症による影響)感染症の影響により、今年4月からは売上の減少が顕著となった。具体的には、前年同月比で4〜6月は〇〇%減という状態であった。現在(7月下旬時点)も、前年と比べ有意に客足が遠のいており、売上の減少は約〇〇%と大変厳しい状況にある。このような売上減少の中、家賃等の固定費負担が大きく、経営難が続いているといえる。
また、上記売上減少については、東京を中心とした感染症「第2波、第3波」の発生も考えられることから、回復の見込みが測りづらい状況となっている。このような状況を踏まえ、新型コロナウイルス感染症の影響を乗り越え、再び十分なサービスを提供していくために、当店は岐路に立たされている。
(4)今回の申請計画で取り組む事業名
「今回の申請計画で取り組む事業名」は、30文字以内で記載します。簡潔に、これからやる取組が分かるよう、シンプルに表現します。
以下、記載例となります。
(5)今回の申請計画で取り組む内容
「今回の申請計画で取り組む内容」は、次の(6)と並び重要となる項目です。シンプルに言うと、「補助金をもらって何をするのか」という部分になります。
この(5)と(6)がしっかり書けていない申請書が採択されることはありません(つまり、落ちます)。しっかりと気合を入れて書いてください。
以下、記載例となります。
(今回の申請計画で取り組む内容)当店が本補助金を活用し取り組むのは、販路拡大・売上向上を念頭に置いた非対面ビジネスモデルへの転換である。具体的には、観光客へ向けたテイクアウト用サンドイッチの新規販売を行う。
(販路開拓の取組等)
【地元顧客へ向けたテイクアウト用サンドイッチの新規販売】
当店は店舗面積が狭く、従来の客席数は〇〇席程度であったものの、感染症対策のため席数を半分の〇〇席程度まで減らしている状態である。このような背景から、店内飲食のみでは十分な収益は見込めず、事業継続が困難な状態となっている。そこで、新たにテイクアウト販売を行うことによって、感染拡大リスクを低減しながらも十分な売上確保を図っていきたいと考えている。
具体的には、当店から徒歩圏内にある観光地へ来訪する観光客へ向けて、散策しながらでも片手で気軽に食べられる「サンドイッチ」を提供すべく、新規製造を行う。
当該観光地は都心とは思えない緑豊かな観光地である上、自然だけでなく、日本庭園や古墳も有しており、歴史家なども多く訪れることが知られている。特に休日には多くの観光客やツアー客でにぎわっている。一方で、当店周辺は住宅街であるため、観光客向けの昼食やおやつのテイクアウト販売は現状ほとんど行われていない。
そこで当店は、当該観光地に来訪する観光客やツアー客へ向けて、サンドイッチのテイクアウト販売を行う。当該観光地には長時間座って食事をするような場所がないため、このような歩きながらでも片手で気軽に食べられる料理は観光客から一定のニーズがあると想定される。また、サンドイッチの販売は初の試みとなるものの、当店の提供実績からイタリアンは中高年に人気が高いと考えられ、当該観光地の観光客の多くは中高年であることからも、サンドイッチ販売は観光客との親和性が高いと考えられる。
このような背景から、本補助金を活用し「サンドイッチの製造機」「サンドイッチ製造に使用するガスコンロ付きオーブン」の新規購入を検討している。また、現在のオペレーションに加えてサンドイッチの新規製造の手間が増えるため、現状業務の効率化を図るべく。現在使用している手動パスタマシーンから「電動パスタマシーン」への切り替えを行い、生産性向上を図りたいと考えている。
このような形で記載します。
非常に骨の折れる部分かと思いますが、ここが申請のキモとなります。なお、ご自分で書かれるのが大変だという方がいらっしゃいましたら、当事務所は補助金申請書作成・申請代理を行っておりますので、この記事の最下部をご確認下さい。
(6)本補助金が経営上もたらす効果
とうとう最後の項目です。「本補助金が経営上もたらす効果」は先ほどの(5)と並び補助金の採択に大きく影響する項目です。この項目では、(5)の取り組みによってどのような効果が得られるかを、ざっくりとした試算を示しながら説明します。試算といっても難しいものではなく、「1日〇円の売上増加なら、1か月で〇万円」程度のもので大丈夫です。
以下、記載例となります。
(本補助金が経営上もたらす効果)前述の当店近隣観光地へ来訪する観光客へ向けたサンドイッチのテイクアウト販売によって、売上向上の効果が見込まれるといえる。
感染拡大リスクを抑えるため席数を減らして営業している当店舗にとって、店外向け飲食の開始は大きな意義があると考える。〇〇駅の1日当たりの利用者数は約〇万人であり、そのうち1%が観光客であると想定すると、観光客数は1日当たり〇〇人程度である。当店周辺にテイクアウト販売を実施している店舗が少ないこと及び競合であるイタリアン店が少ないことを踏まえ、観光客の内1割へサンドイッチを販売することができれば、1日当たりの販売数量は約〇〇個となる。サンドイッチの販売単価は700円程度を想定しているため、1日当たりのテイクアウト用サンドイッチ売上は〇〇円、月当たり〇〇万円となる。現状、月当たりの売上規模が100万円前後の当店にとって、当該売上向上は非常に大きな効果があるといえる。
上記の売上向上効果をまとめると、下図のようになる。なお、参考として、現状の1日当たり売上高は約3万円、1月当たり売上高は約100万円である。
以上、本計画における取組や効果を述べた。感染症の影響を乗り越え、今まで通り経営を継続していくためには、新たな販路を開拓し、売上向上を図ることが必要不可欠であると考える。サンドイッチ販売を主眼とする当取組を通してこのような販路開拓や売上向上を達成すべく、従業員一同、一丸となり励んでいく覚悟である。
補助金申請の代行は当事務所にお任せ下さい
ここまで、小規模事業者持続化補助金(コロナ特別対応型)の申請書の書き方と記入例について解説しました。実際に補助金申請をするにあたっては、ただ文章を書くのではなく、実際に「採択される」申請書を作成しなければなりません。上記で記入例として記載したものについても、実際の申請と比べて「品質が低く」「文量が少ない」ものとしております。実際の申請では、さらにレベルの高いものを作成しなければ、採択されることは難しいケースも多いのです。
当事務所は補助金申請の代行を、完全成功報酬20%で請け負っております。
もし補助金が採択されなかった場合(補助金を受け取ることができなかった場合)は、成功報酬のため、一切の費用を頂きません。詳しくは、「補助金申請支援」のページをご確認ください。
また、当事務所では、補助金申請だけでなく、日ごろから「銀行借入に関する支援」「経営コンサルティング」などを業務として行っているため、個人経営や小規模店舗への理解も深く、事業者の方に寄り添った支援を強みとしております。
ご依頼やご相談は、メールからお待ちしております。